ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港で5月29日に開催された「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」2020年プレ・スプリング・コレクション(クルーズ・コレクション)のフロントロウには、今年2月にデビューしたK-POPガールズグループItzyのメンバーYEJi、LiA、RYUJIN、YUNA、CHAERYEUNGの5人の姿があった。
ItzyはSMエンターテインメント(SM ENTERTAINMENT)やYGエンターテインメント(YG ENTERTAINMENT、以下YG)と並ぶ韓国の3大芸能事務所の1つであるJYPが手がけており、同社には15年にデビューしたアジア発ガールズグループのTWICEも所属している。全メンバーのスタイリングを担当するチェ・ヘスン(Choi Hee Sun)=ファッション・クリエイティブ・ディレクターは「JYPはTWICEよりももっとクールで気まぐれで、より強いグループを作りたいとしていた」と初めに同社から与えられたグループの方向性について明かした。
Itzyが現時点で発表しているのはデビューシングル「ダラ ダラ(Dalla Dalla)」の1曲のみだが、韓国のガールズグループ史上初となる9本の音楽番組への出演を達成。「フェンディ(FENDI)」や「シャネル(CHANEL)」そして「ヘロン・プレストン(HERON PRESTON)」を着用したミュージックビデオはYoutubeで1億回以上再生され、ブランドに大きな利益をもたらしている。またビューティ企業は近年K-POPグループをアンバサダーに採用し始めており、同グループは韓国「M・A・C」のキャンペーンモデルに抜擢された。
K-POPにおけるファッションはファンから注目を集める第一要素であり非常に戦略的だ。芸能事務所は何十億ウォンもの予算を衣装に注ぎ、スタイリングではビジネスへの潜在的な影響やファンの共感度、どのファッションアイテムが結果としてグループにラグジュアリーブランドのバックアップやコラボレーションをもたらすかなどを検討する。「ファッショナブルなグループであることは更なる人気につながる。ファッションは視覚的に印象づけられる最初のものであり、コミュニケーションの第一歩だ」とヘスン氏は語った。
また米国のセレブリティーとは違い、パフォーマンス用の仕様変更などで借りたサンプルを損傷しかねないため、韓国の芸能事務所はラグジュアリーブランドを含むほとんどの衣装を購入しており、そこに多大な予算を割り当てている。同氏は「Itzyのメンバーは小柄なので完璧にフィットするようカスタマイズが必要になる。そのため借りることは難しく、衣装の90%は購入したものでイメージに合うものがなければ制作している」と話し、「フィッティングでジャケットを着たとして、腕が上がらないと言われれば余分に生地を脇の下に加える。そうすることでパフォーマンス時に制限なく動くことができる。アンダーウエアは衣装に全て縫い付け、ずれや露出がないようにしている。メンバーは10代なので間違ったイメージを持たれないよう十分に気を使っている、間違ったイメージを生み出したくはない」と加えた。
新曲の発表時には毎回曲に合わせた新しい衣装を工夫することが求められる。「プロモーションのピーク時には毎日メンバー1人につき4種類のルックが求められることもあり、全てJYPの承認を得る必要がある。時には完全に変更されることもある。新曲の発表やプロモーションをしていない時でも、広告案件や他の仕事が進行している」という。ヘスン氏はこの数カ月の間、16~19歳のメンバーらに「ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD)」や「アレキサンダー・ワン(ALEXANDER WANG)」「ヴェルサス ヴェルサーチェ(VERSUS VERSACE)」「ジバンシィ(GIVENCHY)」そして「アレキサンダー・マックィーン(ALEXANDER McQUEEN)」などあらゆるラグジュアリーブランドを着せてきた。近年の業界の動きについて同氏は「長らくスタイリストとして働いていて言えることは、ファッションはますますK-POPにとって重要なものになってきていて、芸能事務所のファッションへの予算は途方もないほど増えてきているということだ。それはグループのイメージとファッションが成功するためにどれだけ大切かということに、彼らが気付いてきたことを意味している」と語った。